タダジュンさん展


私はTwitterとかFacebookとか、
情報がバンバン入ってくるものが苦手で、
そういうのはあまり見ない。

キリが無くて、ありがたみもないなあ、と思ってしまうから。

なんでもさっと受け流せる性格なら気にならないと思うけど、
知り合いだったりすると、きちんと対応しなきゃ、と思ってしまうので。
なんでもほどよくいい加減にするのがベストだと思うけど、
変なところ不器用なので、疲れてしまうのであった...。

それならいっそ知らない方がいいな、と思う。

バイキングみたいで、料理がズラーっと並んで、
お皿に入れちゃったから、無理に食べなきゃいけないかな、
となんか料理を楽しめない。

私は、一つ一つ自分の食べたいものを注文する方が性にあってる。
まあ、たまにはバイキングもテンション上がるけどね。

で、その結果、情報は自分が欲しい時に自分から取りに行くしか無い。
だから、展示終わっちゃってたとか、今日じゃなかった、とか
たまにあっても、まあそれでもいいや、と思っている。

前置きが長くなりましたが、
私は、数人だけたま〜に検索する作家、
写真家、お店、イラストレーターがいる。
(あ、全部1人か2人ずつくらいだな...案外狭い)

昨日ふっとイラストレーターのタダジュンさんのサイトをみました。

2012年の本屋大賞に選ばれた、
フェルディナント・フォン・シーラッハの
「犯罪」と「罪悪」の表紙を描いた、イラストレーターさんです。

その本の内容も表紙も、すごくいいなあと思って感動し、
そのドイツ人弁護士の著者だけでなく、
表紙を描いたタダジュンさんのホームページを見たら、
「小学生日記」という面白いページが!

ご本人の、小学生当時の本物の絵日記みたいなのですが、
とてもうまい!子供目線の世界がなんかほわ〜と癒される。
よく描けてるな〜と普通に感動したので、
勢いでご本人にメールしました。

たまたま見つけましたが、
小学生日記がすごい良かったです、と。

しばらくしたら、
「嬉しいです」と本人からメールがありました。
多分いい人なのだろうなあ。

それが一年前?くらいの出来事でした。

なんとなーくこの間ふっとタダジュンさん検索してみました。

すると、今丁度池袋のギャラリーで展示中、
翌日が最終日、という情報が。

ちょっと遠いけど、明日行ってみよう!
久々に本棚から取り出した「犯罪」を一応鞄に忍ばせる。

クロージングパーティは19:00から、ということだけど、
池袋についたのは18:50。
そのギャラリーポポタムという所は、池袋駅から
徒歩10分程度らしい。
ギリギリだ。

意外と地図は読める方なので、
なんとかギャラリー付近にたどり着くのだが、
住宅街で細々と入り組んだ場所なので、
ここから先は迷う危険があるな。

自力で行くのは諦めて、
通りがかりの人に聞こう。

そこに丁度、たばこを吸いながら自転車に乗った女性が通りがかった。

「あの...この辺にサンクスってありますか?
それか自由学園明日館か」(←ギャラリーの地図で目印になってた)
「サンクスはあるけど...何?どこ行きたいの?」煙草スパー
「ギャラリーポポタムってとこです」
「ああ、知ってるよ。ここからちょっと説明しにくいな...
じゃあ連れて行ってあげるよ」
「えーありがとうございます!」

ラッキー、いい人だった。
彼女は煙草を吸いながら自転車に乗っているので(器用なお方だなあ)
私は小走りでそれについていく。

河原で鬼コーチに必死でついてく運動部員みたい。

私「なんか予定あったんだったらすいません...、
でも聞いたのが場所知ってる人で良かったです!ハアハア」←変態なわけでなく小走りな為
鬼コーチ「まあ、近所に住んでるからいいよ。たまに行くとこだし。
あそこさあ、今何やってんの?」
私「タダジュンさんってイラストレーターの個展ですハアハア」
鬼コーチ「ふーん、どんな絵?」
私「こんなのですハアハア」
鞄から本を出して見せる。
私「これ去年すごい売れたんですハアハア」
鬼コーチ「ふーん、私もちょっと見て帰ろうかな」スパー
私「いいと思いますよ!」

私「あ、でも私ついてないんで...今日やってなかったりしたらすみません」
鬼コーチ「はあ??どーゆうこと??あ、あそこだよ」


ギャラリーに着いたが、電気がついていない。

鬼コーチ「やってないじゃん!」
私「えええ!!!わあ〜すみません〜私がついてないばかりに...!!」
鬼コーチ「ん、いや、ちょっと待って、店の奥でなんか上映会してるっぽい。
だから電気消してんだ」
私「なんだ、そーゆうことか〜良かった〜」
鬼コーチ「映像だったらやめとこうかな、じゃあね」
私「あ、ありがとうございました!」

親切な鬼コーチと別れ、
暗い店内にそろ〜と入って行く。

七時は過ぎてしまったので、
上映会が始まってしまっていたのだ。

ギャラリーの奥の壁に、
ユーリ・ノルシュテインみたいな、
ノスタルジックなモノクロのコマ撮りアニメが
大きく映し出されている。

音声も字幕もないし、ストーリーもよくわからないけど、
キャラクターはライオン、3人のドクロ、
四角いジャングルジムみたいな線の人。

それらがじわじわとゆっくり動く。

その場にいた20人くらいのお客さんと、じっと見る。
最後にタイトル、midnight la la la la。

とても可愛い世界だった。
終わったので電気が付く。

タダさんご本人の挨拶。
赤いニットキャップで、温和そう。

「映像が終わったので、これからクロージングパーティです、
どうぞゆっくりしってってね」、との事でしたが、(ウロ覚え)
お集まりのみなさんは、ほとんどタダさんのお友達とか知り合いみたいで、
私みたいに1人でひょこっと来た人はあまりいないみたい。

電気がついたからやっと全体が見れた展示は
タダさんの新作版画作品と、タダさんの奥さんの詩と版画。
お客さんは皆で酒を飲みだしたので、1人でギャラリー内をじっくり見れた。

じーっと映像を見てたら、
タダさんが「これはね、この人形をちょっとずつ動かして、
このカメラで撮ってるんだよ」と話しかけてくれた。

よく見ると、プロジェクターの横に小さいカメラと
アニメーションに出てきたライオンやドクロがいる!

「え、これで撮ってるんですか?もっと大がかりなものかと...」
(以前ロシアの映像作家、
ユーリ・ノルシュテインの製作風景を見たことあるけど、
滅茶苦茶おおがかりだったので)

何が可愛いって、ライオンのたてがみを梳かす櫛!
針金で自作されたっぽい、小さい小さい櫛なんだけど、
それでライオンのフェイクファーのたてがみをちょいちょいと
梳かすと、あたかも風が吹いたみたいになるのです。

手足の関節の部分も、練り消しでくっつけてるだけなんだ〜と
種明かしして下さり、その度「ええ〜!こうなってたんだ」と
びっくりして変な声が出る私。

そうやって、ちょっとずついろんな位置を変えていって、
コマ録りアニメを一ヶ月で五分程度作るらしい。

映像作品の作り方を優しく丁寧に教えてくれるタダさんの前に、
「実はこれでタダさんを知りまして...」とおずおずと
シーラッハの「犯罪」を取り出す。

私「この本が、中身も装丁もいいな、と思って」
タダさん「ええー!わー嬉しいな!その本いいよねー!!」
私「いいですよねー!」
タダさん「どの話が好きなの?」
私「えーそう言われると迷うなあ、どれも甲乙付け難い...タダさんは?」
タダさん「僕はねーエチオピアの男とーあとタイトル忘れちゃったけど
なんかお姉さんと弟の...」
私「あーチェロですね!チェロもいいですよね...私はハリネズミかな。」
タダさん「どんなんだっけ〜?」
私「悪党一家に産まれた末っ子の天才少年の話です」
タダさん「あーそれね!」
私「でも全体的にどの短編もいいですよね。最初の話のフェーナー氏のもいいし。」
タダさん「うんうん、フェーナー氏もいいね〜。でももう一冊の方よりこっちのが僕も好きだな〜」
私「うん、こっちの方がいいですよね。」(犯罪、と罪悪、の二冊ある)


と、まさかタダさん本人と本の内容についても話せると思っていなかったな〜。

調子に乗って、
ホームページの小学生日記が面白かったから、
感想をメールで送った事あります、と言ったら、
「あー覚えてるよ!ちょっと待って、興味ある人いたら、って持って来たのがあるよ!」とバックヤードの奥で何やらゴソゴソ。
何かを抱えて戻って来た。

小学生日記!!

「良かったらあげるよ〜」

もらってしまった!

犯罪のハードカバージャケットに
ばっちりサインもしてもらいました。


この後、今回の展示作品で好きな作品を伝え、
ご本人はどれが気に入ってるのかなど質問する。

タダさんは、10歳くらい年上だけど、
この絵がいいですね、とか言うと、
わー嬉しいな〜とオープンに喜んでる様子で、
かなり素直なキャラクターだなあ、と思った。

前日たまたまタダさんのホームページ見て、
次の日ふらっと展示見に行けて、
東京にいて良かったな〜と思った。