宗教の田中さんと牛乳

日中家にいると、たまにインターホンが鳴る。

 

先月、何だろうと思って受話器を取ると、

宗教の勧誘だった。

最初は分からない。

「田中です...」から始まるから。

 

近所の人が何か用かな?と思って話を聞いてみると、

どうやら宗教の大きな集会が近々あるそうだ。

「ポストにチラシを入れておくから読んで下さい」と言う。

 

放っといたまま、全然読まなかった。

 

数日後再び田中さんが「田中ですけど...」と言ってチャイムを鳴らす。

 

「読んでもらえました?」

「読んでないです」

「神様の教えはご存知?」

「幼稚園がキリスト教だったので...大体は知ってます」

「どの言葉が好きですか?私もね、もともとは知らなかったんですよ」

 

なんて言おうか迷う。

断るのが下手なのだ。

むやみに人を傷つけたくない。

だし、なんかベストを探ってしまう。

結果は変わらないのだから、

すぱーんと言えちゃえば楽だとは思う。

 

田中さんはすごく話したそうだ。

いろんな人に拒絶されて来たのだろう。

インターホン越しに話しているから顔は分からないけど、

多分いい人なんだろうなあと思う。

 

考えた結果、こういうことにした。

「私は今、そういうのを必要としていないので、必要としている方の所に行って下さい」

 

田中さんは納得したようだ。

うまく言えて良かった。

 

しかし、今度は牛乳の売り込みが来た。

前日に二本、種類の違う瓶を渡してくる。

 

ぼーっと受け取ってしまう。

夜、「この瓶なんだっけ。ああそうだ昼間貰ったんだ。まいっか飲んどこ。」

と思ってテキトーに飲む。

 

今日、インターホンが鳴って、出たらその人だった。

 

また断るという結果は変わらないのに、

どういうタイミングで何て断ればいいのか分からない。

雰囲気で分かるだろうと思ったら、

何故か彼の中で話が進んで「じゃあここに住所と名前を...」

と言いだしたので、「ええっ?何で住所と名前を書かなきゃならないんですか?」

「えっ?だって...注文するんじゃないの?」

 

何故そう思っちゃったのかなあ...

そういう営業テクニックとかじゃなくて

純粋にそう思ったようだった。

何のせいだろうなあ、としばし考える。

 

うーん、うまく断るのって難しい...。

 

コツは何も考えない事なんだろうなあ、と思う。